お知らせ

近視パンデミック 子供の目が危ない ということについて解説いたしました。

この頃は小さいうちから、スマホを使うお子さんが増えています。それに伴って、近視のお子さんが増加中です。2020年の文科省による統計では、裸眼視力が1.0以下のお子さんの割合は小学生の37.5%、中学生の58%、高校生の63%と言われています。40年前に比べて、小学生で2.1倍、中学生で1.7倍、高校生では、1.2倍に増えています。

世界においても非常に増えていて2050年には近視の方がなんと50億人になるのではという推計もあります。

 

近視が進んでも単純に眼鏡やコンタクトレンズを使えば良いのでは、と思われますが、果たしてそうでしょうか。

実は、近視が進んでしまうととても危険なのです。

近視がどのようなものかを説明する前に、目はどうして見えているかということについて説明します。

目の玉は外から光が入ってきて、角膜(黒目)、水晶体(レンズ)を通って、目の奥の網膜にピントがあいます。そこから脳に信号が伝わって、ものが見えるということになっています。

近視というのは、目がリラックスした状態で、網膜よりもピントが前にあってしまう状態です。目は普通は遠くを見たり近くを見たりするときに、無意識のうちに毛様体筋という筋肉を使って水晶体の厚さを変えて、ピントを合わせます。通常は一番リラックスした状態で、網膜にピントがあうのが、正視と行って、いわゆる目が良い人です。

近視の人は遠くからの光が、網膜より手前にピントが合うため、遠くのものがボケるというわけです。近くのどこかにはピントが合います。近視は軸性近視と屈折性近視に分けられますが、年をとるにつれて軸性近視が増えてきます。目の奥行き方向の長さが、長くなり、ちょうど目がラグビーボールのようになる状態です。

近くを見る時間が長いと、近視が進みやすくなってしまいます。特に8−13歳頃が近視が進みやすい年齢です。近視はおおよそ20歳半ばくらいになるとあまり変化しなくなります。近視は背が伸びるのと同じで、進むけれど決して軽くはならないという特徴があります。

これだけなら、単純に眼鏡やコンタクトレンズで矯正すれば見えるのですが、実は近視になるといろんな目の病気を起こしやすいことがわかってきました。日本人の失明原因1位の緑内障になる確率は、2倍から3倍となります。白内障という目のレンズが濁って見えにくくなる病気は、2倍から5倍になります。網膜剥離と言って、運が悪いと失明してしまう病気は3倍から13倍になります。近視性黄斑症という、網膜の一番大事なところが障害を受けて見えにくくなる病気は、なんと、14倍から845倍!となっています。この近視性黄斑症は大変治療が難しい病気です。このように、近視が進んでしまうと色々不都合が出てしまいます。

 

2000年ころまでは、何もできることがなく、諦めるしかありませんでした。近年の研究により、近視進行はある程度防ぐことが可能であることがわかりました。

進行に対して抑制できるのが、太陽の光と生活習慣、そして特殊な目薬(マイオピン)とコンタクトレンズ(オルソケラトロジー)です。

台湾での研究によると1日2時間太陽の光を浴びると、同じ年で近視になる子供の数が減っていくことが統計学上明らかになりました。

近くを見る時間を減らすことも大切です。20−20−20ルールというものがあります。これは、アメリカの眼科学会で提唱されました。20分近くを見たら、20秒間、20フィート(だいたい6M)遠くを見るというものです。元々は、目の疲れの予防に考えられましたが、近視進行の抑制にも役に立つと言われています。

 

そのほか、有効で、証拠があるものとしては、特殊な目薬(マイオピン)を夜1回つけるもの、さらに効果が高いものとしては、夜間に特殊な形状のコンタクトレンズを装用して、日中は裸眼で過ごせるオルソケラトロジーというものがあります。これは、日中快適に過ごせるだけでなく、近視進行も抑制してくれる良い治療法です。目薬とオルソケラトロジーを併用すると、さらに効果が高くなると報告されています。残念ながら、どちらも保険適応はないため自由診療となっています。

 

以上まとめますと、

近年、近視がすごく増えています。

近視は、将来的な白内障、緑内障、網膜剥離、近視性網膜症といったさまざまな目の病気につながりうるものです。

小さい頃からの予防が大切と言えます。

 

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