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色覚異常があると 焼き肉がうまく焼けない!? ということについて解説いたしました。

色覚異常というのは、以前は色盲とか色弱などといわれていました。イメージ的には色がわからなくて白黒の世界なの?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、この色覚異常は色が全然わからなくなるわけではなく、見分けるのが難しい色の組み合わせがあるというものです。色覚異常には先天性と後天性というものがありますが、今回は先天性に限定して解説します。なお、色覚異常は2017年に日本遺伝学会から色覚多様性とよぶことが提唱されています。今回は従来の表現で統一します。

もともと目の神経細胞には青、緑、赤を感じる3種類の錐体細胞というものがあります。この錐体細胞が色の感覚を担うセンサーのようなものと考えてください。各々得意な色が違うので、その色のブレンド具合、すなわち反応の微妙なバランスにより100万色という、すごくたくさんの色を認識しています。ちなみに現在の液晶テレビなどは1677万色も表現できるといわれています。

 

色というのは光の波長で決まります。人間が見える波長はおおよそ380-780nmといわれています。緑と赤という2つの色は感覚としてはすごく離れているものですが、実はそれらの波長は割と近いのです。そして、その遺伝子も近くに存在するので、遺伝するときに緑と赤の遺伝子がまじりあってしまうことがあります。この緑と赤の遺伝子は人間の染色体のうちx染色体にあります。まじりあってしまうと何が困るのでしょうか?まじりあった遺伝子があると、緑と赤のどちらかを認識する細胞がそもそもできなかったり、働きが弱くなってしまうことがあるからです。先天色覚異常はほとんどが、この赤緑異常のため、この場合に限って説明します。

 

ちょっと難しくなりますが、男性の染色体は44+XY、女性の染色体は44+XXとなっています。色覚はX染色体連鎖劣性(潜性)遺伝で支配されています。そのため男性はまじりあったX染色体が一つあるだけで、色覚異常となります。女性はX染色体が2つあるので、同時にまじりあった染色体がない限り、色覚異常を発症しません。以上のことから、男性は女性よりも色覚異常を起こしやすくなります。その結果、おおよそ男性の5%、女性は0.2%が色覚異常といわれています。男性だと学校のクラスには1人いるイメージです。AB型の方が5%といわれているので、それと同じくらいの割合です。女性は結構探しても、ほとんどいないという感じです。なお、女性は保因者といってまじりあった遺伝子と正常のX染色体を持っている場合があり、その確率は10%となります。

 

少し複雑になりましたが、今の話をまとめると、色覚異常は男性でよりなりやすいということを知っていればよいかと思います。

 

さて、いよいよ、色覚異常でなにが困るか?ということです。

色覚異常が軽症の場合にはほとんどの場合意識しないで過ごしていることが多いです。軽度の色弱(異常3色覚)の場合が多いです。

色覚異常が重度の場合には、小さい頃はお絵かきなどで分かることがあります。ピンクの象をかいたり、スイカの食べる部分を緑に塗る、木の葉っぱを茶色にぬるなどといったことがあります。知識がないとふざけないで!ということになりますが、本人にとっては見えている通りにやっているつもりなので、それを指摘してしまうとかわいそうなことといえます。幼稚園や保育園、小学校の先生にはぜひ知っておいてほしいものです。また、赤い肉がやけるとだんだん黒くなりますが、1型色覚の場合には、その赤と黒の区別がしにくくて、生焼けの肉をたべて、おなかを壊すということもあります。この認識については、成長に伴って、ほかの情報から補完していくことが多く、普通の生活にはほとんど困ることはありません。

 

しかしながら、職業の選択では制度的になれないものや、やりにくい仕事もあります。以前よりは色覚異常の制限は減っていますが、鉄道関係や航空関係は色覚が正常であることが必要となっています。また、微妙な色を扱う美容関係や、印刷業、映像関係、食品関係は仕事上、やりにくい可能性があります。そのため、職業を選ぶうえで、色覚異常のありなしは知っておいたほうがよいというものです。この規制はだんだん変化していますので、気になる方はときどき情報を検索しておいた方が良いと思います。

 

平成15年までは、学校の健診において、小学校4年生の時に色覚検査が必須になっていたのですが、それ以降は色覚検査が必須項目から外れたため、知らずに大きくなり、職業選択の時に初めて色覚異常に気付くということもありました。その是正のために平成25年に日本眼科医会と眼科学会が文部科学省に要望書を提出し、学校医の健康相談において、生徒や保護者の同意を得て、個別に検査、指導を行うということになりました。しかしながら、全員が検査を受けているわけではないため、知らずに成長して職業選択の時に困るということがあります。色を扱うような職業に就く場合には、一度は色覚検査を行っておいた方が良いといえます。

 

以上まとめますと、色覚異常は男性の20人に1人、女性の0.2%にみられます。普通の生活においては、困ることはあまりないですが、職業を選ぶときには注意が必要です。気になる方は小学校や遅くとも中学校くらいのときに、一度色覚検査を行っておいた方が良いと思います。

 

なお、焼肉が生焼けになってしまうことを何度か経験すると、色以外の情報から、うまく焼けるようになるということです。

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