「ICL手術を受けたいけれど、両眼で数十万円という費用が気になる」という方は少なくありません。まとまった出費だからこそ、少しでも取り戻せる方法は知っておきたいところです。
ICL手術の費用は医療費控除の対象になり、確定申告をすれば所得税と住民税の一部が戻ってきます。ただし公的医療保険や高額療養費制度は使えません。
この記事では、いくら戻るのかの目安から確定申告のやり方までをまとめました。
この記事でわかること
- ✔ICL手術費が医療費控除の対象になる理由
- ✔年収別に「いくら戻るか」の還付額の目安
- ✔対象になる費用・ならない費用の線引き
- ✔確定申告の手順と必要書類
なお、税額の具体的な計算は一人ひとりの状況で変わります。最終的な判断は所轄の税務署や税理士にご確認ください。
この記事の目次
ICL手術は医療費控除の対象になる(国税庁の見解)
ICL手術の費用は、医師による治療の対価として医療費控除の対象になります。
医療費控除は、病気やケガの治療のために支払った費用を税金の計算で差し引ける制度です。近視や乱視を矯正して視力を回復させる手術も、この「治療」にあたると考えられています。
国税庁は、視力回復のためのレーザー手術(レーシック)の費用を、医師の診療・治療の対価として医療費控除の対象になると案内しています。ICLもこれと同じ趣旨で対象になると、各クリニックが公式に案内しています。
一方で、ICL(眼内コンタクトレンズ)は公的医療保険が使えない自由診療です。手術費は全額が自己負担になります。
また、医療費が高額になったときに使える高額療養費制度は、公的な保険診療が対象です。自由診療のICLには使えません。
「保険が効かない=何も戻らない」と思われがちですが、保険が使えないことと医療費控除が使えることは別の話です。ここは混同しやすいので注意しましょう。
医療費控除の仕組みと還付額の計算方法
医療費控除は「所得控除」の一つで、支払った費用がそのまま返ってくる制度ではありません。戻るのは控除額に税率を掛けた分だけです。
計算は二段階で考えると分かりやすくなります。まず「控除額」を求め、次にそこから「軽くなる税額」を導きます。
医療費控除額の計算式(上限200万円・足切り10万円)
医療費控除額は、その年に支払った医療費の合計から、保険金などで補われた金額と一定額を差し引いて計算します。控除額の上限は200万円です。
控除額 = 支払った医療費の合計 − 保険金等で補われる金額 − 足切り額
- 足切り額は原則10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)
- 控除額の上限は200万円
たとえば両眼のICL手術に60万円を支払い、ほかに医療費や保険金がない場合、控除額は「60万円 − 10万円 = 50万円」です。
生命保険や医療保険から手術給付金を受け取ったときは、その金額を差し引いてから計算する点に注意してください。
還付されるのは『控除額×税率』の分だけ
実際に軽くなる税額の目安は「控除額 ×(所得税率 + 住民税率10%)」で求めます。支払った費用がそのまま戻るわけではありません。
所得税は、課税される所得に応じて5%から45%まで段階的に上がる累進税率です。住民税の所得割は原則10%と決まっています。
控除額が50万円で所得税率10%・住民税10%の人なら、軽くなる税額の目安は「50万円 × 20% = 10万円」です。所得税は申告後にお金が戻り、住民税は翌年度分が軽くなります。
税率が高い人ほど戻る額も大きくなります。次の早見表で、ご自身の年収に近いところを目安にしてみてください。
【年収別】ICLの医療費控除でいくら戻る?還付額の早見表
ICLの費用相場は両眼でおおむね45万〜66万円(税込)が目安です(各クリニック公式による・2026年7月時点)。年収(税率)が高いほど戻る額も大きくなります。
料金の一例として、品川近視クリニックのICLは近視-4D未満で両眼40.7万円(税込)、先進会眼科のEVO ICLは両眼42.7万円(税込・-3D未満)に着手金2.2万円が加わると、各クリニックが公式に案内しています。
下の表は、両眼のICL費用だけを医療費とし、保険金なし・足切り10万円・単身の会社員という前提で軽減される税額を概算したものです。年収は目安として、合算税率(所得税率+住民税10%)に置き換えています。
| 年収(合算税率の目安) | ICL45万円 | ICL50万円 | ICL60万円 |
|---|---|---|---|
| 年収400万円(約15%) | 約5.3万円 | 約6.0万円 | 約7.5万円 |
| 年収500万円(約20%) | 約7.0万円 | 約8.0万円 | 約10.0万円 |
| 年収600万円(約20%) | 約7.0万円 | 約8.0万円 | 約10.0万円 |
| 年収800万円(約30%) | 約10.5万円 | 約12.0万円 | 約15.0万円 |
同じ費用でも税率が変われば戻る額が変わり、年収400万円と800万円では2倍近い差が出ます。所得税率は年収400万円で約5%、500万〜600万円で約10%、800万円で約20%と仮定しています。
この数値はあくまで概算・目安です。実際は扶養家族の有無やほかの所得控除、ふるさと納税の利用などで変わります。正確な金額は所轄の税務署や税理士にご確認ください。
民間保険の手術給付金を受け取ったときは差し引く
生命保険や医療保険から手術給付金を受け取った場合は、給付金を差し引いてから控除額を計算します。
差し引くのは、そのICL手術に対して支払われた給付金だけです。ほかの入院や通院でもらった給付金まで差し引く必要はありません。
たとえば60万円のICLで手術給付金10万円を受け取ると、控除額は「60万円 − 10万円 − 10万円 = 40万円」です。給付金がない場合の50万円より控除額が減るため、戻る税額もその分少なくなります。
医療費控除の対象になる費用・ならない費用の線引き
医療費控除に合算できるのは、治療に直接かかった費用と、通院のための公共交通機関の交通費です。手術と直接関係するかどうかが判断の目安になります。
対象になる費用は本人分だけでなく、生計を一にする家族のために支払ったものも合算できます。
対象になる費用(手術費・検査費・公共交通機関の交通費)
ICL手術に関わる費用は、手術本体だけでなく検査や診察もまとめて対象になります。
- ✔ICLの手術費(眼内に入れるレンズ代を含む)
- ✔手術前の適応検査費や術後の診察費
- ✔電車やバスなど公共交通機関を使った通院の交通費
ICLのレンズ代は手術費に含まれるため、日常のコンタクトレンズ代のように区別する必要はありません。交通費は領収書が出ないことも多いので、日付・区間・金額をメモに残しておくと申告のときに役立ちます。
対象にならない費用(眼鏡・コンタクト・ガソリン代・ローン金利)
治療そのものではない費用や、日常使いの視力矯正グッズは対象になりません。迷ったら手術との直接の関係で判断します。
対象にならない費用
- 日常使いの眼鏡代・コンタクトレンズ代
- 自家用車で通院したときのガソリン代・駐車場代
- 原則としてタクシー代(公共交通機関が使えない場合を除く)
- 医療ローンの金利・分割手数料
近視を治す目的でも、日常の眼鏡やコンタクトレンズは治療ではなく矯正具とされ対象外です。これらを医療費に含めて申告しないよう気をつけてください。
ICLをメディカルローンで払うときの医療費控除
メディカルローン(医療ローン)で分割払いにした場合でも、治療費の部分は医療費控除の対象になります。
ローンを組むと、信販会社が治療費をまとめて医療機関に立て替えます。この立替払いが行われた年、つまり契約して手術を受けた年に、費用の全額をその年の医療費として申告できます。
ただしローンに上乗せされる金利や分割手数料は、医師の治療の対価ではないため対象になりません。申告するのは治療費の元金部分だけです。
一方、現金やクレジットカードで支払い、その支払いが年をまたぐ場合は扱いが変わります。実際にお金を払った年ごとに区分して、その年の医療費として申告します。
ローンだと支払いは翌年以降も続きますが、控除の対象になるのは立替払いのあった年にまとめて、と覚えておくと迷いません。手数料の分は含めないようにしましょう。
ICLの医療費控除を受ける確定申告の手順
ICLの医療費控除は、自分で確定申告をして手続きします。会社員でも年末調整では受けられません。
必要書類と提出方法(明細書・e-Tax・領収書は5年保管)
申告に必要なのは主に4点です。領収書の提出は不要ですが、自宅での保管が求められます。
申告に必要な書類
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバーなどの本人確認書類
- 還付金の振込口座の情報
e-Taxやマイナポータル連携を使えば、自宅からオンラインで提出できます。領収書は申告後も5年間の保管が必要なので、捨てずに残しておきましょう。
過去のICL手術も5年前までさかのぼって申告できる
還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間さかのぼって手続きできます。
過去にICL手術を受けたのに医療費控除を申告し忘れていた方も、まだ間に合う可能性があります。当時の領収書が手元にあれば、いま申告して還付を受けられることがあります。
静岡や岐阜など、遠方からICLを受けに行った方は交通費も対象になるため、当時の記録を確認してみてください。ICLクリニックの選び方は静岡県のICLおすすめクリニックの比較記事でも解説しています。
申告前に知っておきたい注意点(家族合算・年末調整・セルフメディケーション税制)
医療費控除には、知らないと損をしやすい実務のポイントがあります。誰が申告するかで戻る額が変わることもあります。
家族の医療費は合算・共働きは所得が高い人で申告
生計を一にする配偶者や親族の医療費は、まとめて一人が合算して申告できます。共働きなら所得税率が高い人が申告するほど戻る額が大きくなりやすい傾向です。
同じ控除額でも、税率が高いほど軽くなる税額が増えるためです。ICLのように費用が大きい支出は、世帯のなかで収入の多い人がまとめて申告する方法も検討できます。
ただし、総所得金額等が200万円未満の人は、足切り額が10万円ではなく総所得の5%になります。どちらで申告するのが有利かは世帯の状況で変わるため、迷うときは税務署や税理士にご相談ください。
年末調整は不可・セルフメディケーション税制とは併用できない
医療費控除は年末調整では手続きできず、自分で確定申告をする必要があります。会社員の方も忘れずに手続きしましょう。
また、市販薬の購入額を対象とするセルフメディケーション税制とは選択制で、両方を同時に受けることはできません。
ICLのように費用が大きい支出があった年は、控除枠を大きく使える通常の医療費控除の方が有利になりやすいと考えられます。その年にどちらを選ぶかは、支払った金額を比べて判断します。
山梨や長野など、東京の大手クリニックへ遠征してICLを受ける場合の費用や医療費控除の考え方は、山梨県内のICLおすすめクリニックの記事でも取り上げています。
よくある質問
- Q. ICL手術で60万円かかった場合、医療費控除はいくらですか?
-
A. ほかに医療費や保険金がない前提だと、控除額は「60万円 − 10万円 = 50万円」です。戻る税額はこれに所得税率と住民税10%を掛けた分で、税率20%の人なら約10万円が目安になります。いずれも概算のため、正確な金額は税務署や税理士にご確認ください。
- Q. ICLはサラリーマン(会社員)でも医療費控除の対象になりますか?
-
A. 会社員でも対象になります。ただし年末調整では手続きできないため、自分で確定申告(還付申告)をする必要があります。
- Q. ICLのレンズ代は医療費控除の対象ですか?
-
A. 眼内に入れるICLのレンズ代は手術費に含まれ、対象になります。一方、日常使いのコンタクトレンズ代は治療ではなく矯正具とされ、対象外です。
- Q. ICLの手術費用は年末調整で医療費控除できますか?
-
A. 年末調整では手続きできません。確定申告(還付申告)で医療費控除の明細書を添えて申告します。
- Q. 医療費控除はいつまでに申告すればよいですか?
-
A. 還付申告は対象となる年の翌年1月1日から5年間できます。過去にICL手術を受けて申告し忘れていた分も、間に合う可能性があります。
- Q. ICL手術は高額療養費制度の対象になりますか?
-
A. 高額療養費制度は公的な保険診療が対象のため、自由診療のICLには使えません。医療費控除とは別の制度なので、混同しないようにしましょう。
まとめ|ICL手術費は申告すれば税金が戻る
ICL手術の費用は医療費控除の対象で、確定申告をすれば所得税と住民税の一部が戻ってきます。公的医療保険や高額療養費は使えませんが、この制度は自由診療でも利用できます。
戻るのは「控除額 × 税率」の分だけで、支払った費用がそのまま返るわけではありません。年収(税率)が高い人ほど、戻る額は大きくなります。
会社員も年末調整ではなく確定申告が必要で、過去5年分はさかのぼって申告できます。手続きの前に、次の点を確認しておきましょう。
- ✔手術費・検査費・公共交通機関の交通費をまとめる
- ✔手術給付金を受け取ったら差し引く
- ✔領収書は5年間保管する
税額の具体的な計算や申告方法は所轄の税務署や税理士に、手術がご自身に向いているかどうかは眼科の医師の診察でご確認ください。状況に合わせて、無理のない形で検討していきましょう。

