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ICLに興味はあるのに、「合併症が怖い」「10年後はどうなるの」と考えると、あと一歩が踏み出せない。そこで足踏みしている方は少なくありません。
- ✔「白内障や緑内障になると聞いて不安」
- ✔「ICLで失明することはないのか知りたい」
- ✔「どのリスクがどれくらいの確率なのか、数字で知りたい」
この記事の結論
- ✔ICLのリスクはゼロではないが、頻度と時期と対処法まで分かれば落ち着いて判断できる
- ホールICLでの白内障の発生率は0.49%との報告。中心部に孔のない旧モデルは1.1〜5.9%でした(出典:JSCRS)。
- ✔多くのリスクは、適応検査での線引きと術後検診で早めに手を打てる
- 眼の状態によっては「今回は見送る」という結論もあり得ます。線引きは検査を受けて初めて分かります。
ICLのリスクとは?角膜を削らない手術で起こること・起こらないこと
ICLのリスクとは、眼内にレンズを入れる手術に伴う白内障・眼圧上昇・感染症などの合併症です。
レーシックのように角膜を削らない一方で、眼の中を操作する「内眼手術」ならではのリスクが生じます。
日本眼科学会が有水晶体眼内レンズ(ICLなど)の合併症として挙げているのは、白内障・一過性眼圧上昇・緑内障・ハローグレア・角膜内皮細胞障害・網膜剥離・眼内炎です。
同学会の『屈折矯正手術のガイドライン(第8版)』が挙げる術後合併症は9項目あります。
- 術後感染性眼内炎
- ハロー・グレア
- 角膜内皮障害
- 術後一過性眼圧上昇およびステロイド緑内障
- 白内障
- 閉塞隅角緑内障
- 網膜剝離
- 近視性網脈絡膜萎縮
- 虹彩切開あるいは虹彩切除による光視症
JSCRSの情報サイトは、より生活実感に近い切り口で12項目を挙げています。
ドライアイ、グレア/ハロー、感染症、失明の可能性、再手術、過矯正、老眼との関係、眼精疲労、白内障、乱視矯正ICLの回転、緑内障、ICLの脱臼です。
ICLは眼の中にレンズを入れて近視を矯正する手術
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、虹彩の裏側にあたる後房に柔らかいレンズを挿入して、近視や乱視を矯正する手術です。角膜を削らないため、角膜の厚みは減りません。
国内では2003年から臨床治験が行われ、2010年に厚生労働省で認可されました。2014年には最新型のホールICLが承認されています(出典:JSCRS)。
ホールICLは75か国以上で承認を受け、累計100万眼以上の手術実績があるとJSCRSは記載しています。
米国では2022年3月、FDAがEVO/EVO+ Visian ICLを承認しました(21〜45歳、近視-3.0〜-20.0D、乱視1.0〜4.0D)。Dはジオプターと読み、近視や乱視の強さを表す単位です。
現在主流のホールICLは、レンズ中央に微小な穴が開いた構造です。房水(眼の中を流れる液体)の流れを妨げにくく、白内障や緑内障のリスク低減が期待されています。
手術は点眼麻酔での日帰りが基本です。ただし当日は見え方が安定せず、ご自身での車の運転はできません。
レンズを取り出せる『可逆性』がリスクの受け止め方を変える
ICLには、レンズを取り出せば手術前の状態に戻せる可逆性があります。角膜を削るレーシックが不可逆であるのに対し、ここが構造上の大きな違いです。
摘出や交換は、次のような場面で選ばれます。
- 長期経過で度数が変わり、見え方が合わなくなったとき
- 術後に近視・乱視が残った、あるいは遠視になったとき
- 眼内炎を起こし、ICLの摘出が必要と判断されたとき
- 将来、加齢などで白内障の手術が必要になったとき
ただし摘出も交換も、それ自体が眼内手術です。実施するかどうかは執刀医と相談して決めます。
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可逆性は心強い性質ですが、「いつでも気軽に戻せる」という意味ではありません。取り出すときも眼の中の手術になります。
やめたほうがいい・怖いと言われる理由の多くは古い世代のレンズの話
ICLが「やめたほうがいい」「怖い」と語られる背景には、ホールICL登場以前のデータが今も引用され続けているという事情があります。
白内障の発生率は、レンズの世代によって桁が変わるほどの違いです。
レンズ世代による白内障リスクの報告値の違い(出典:JSCRS)
| 報告されている項目 | 中心部に孔のない旧モデル | 現在主流のホールICL |
|---|---|---|
| 白内障の発生率 | 1.1〜5.9% | 0.49% |
| 白内障の進行で手術が必要になるリスク | 0〜1.8% | ホールICL(ICL KS-AquaPORT)の登場以降、大幅に改善したとJSCRSが説明 |
ホールICLでは、目の中の水の流れが術前と同じように保たれます。これが発生率の低下につながっているとJSCRSは説明しています。
長期データの読み方にも注意が必要です。ICL植込み後12年を追った研究(144眼)では、臨床的に問題となる白内障の発生率は13.88%でした。
この13.88%は旧V3モデルICLの使用と有意に関連していました。著者らは最新モデルのICLでは白内障の発生率は低いと結論づけています(Moya T, et al. J Refract Surg. 2015)。
目にした数値が「いつの、どのレンズで、何年追った調査か」まで確認できると、不安の輪郭がはっきりします。
ICLの主なリスク・合併症一覧|発生頻度・起こる時期・対処法
報告されている頻度は合併症ごとに大きく異なります。数千眼に1例という水準のものから、術直後に2割近くで起こる一過性の変化まで幅があるのが実情です。
一覧表で見る主なリスク|頻度・時期・自覚症状・対処法
数値がいちばん大きいのは術直後の一過性眼圧上昇で、低いのは眼内炎です。時期と対処法まで並べると、すぐ連絡すべき項目と経過を追う項目に分かれます。
ICLの主なリスク一覧(頻度・時期・対処法)
| 合併症 | おおよその発生頻度 | 起こりやすい時期 | 自覚症状 | 主な対処法 |
|---|---|---|---|---|
| 白内障 | ホールICLで0.49%(旧モデル1.1〜5.9%)/FDA試験は6か月0眼・3年0.16% | 年単位の長期経過 | かすみ、見えにくさ | ICLを摘出したうえで通常の白内障手術が行える |
| 一過性眼圧上昇・緑内障 | 術後1〜6時間の眼圧上昇36眼(18.0%/200眼中)、ステロイド反応2眼 | 術直後(1〜6時間)と点眼期間中 | 自覚しにくく、検査で分かることが多い | 術後の眼圧測定と点眼の調整。術前から緑内障がある場合は慎重に判断 |
| ハロー・グレア | 要確認(頻度の数値は公表資料で確認できず) | 術後の夜間。多くは時間とともに軽減 | 光源のまわりの輪、光のにじみ | 経過観察が基本。術前に瞳孔径を測定して相談 |
| 感染症(眼内炎) | 6000眼に1例ほど | 術後早期(時期の内訳は各院の説明を確認) | 強い充血、強い痛み、急な見えにくさ | 早期の受診と処置。ICLの摘出が必要になることがある |
| レンズの不適合・度数ズレ・回転 | レンズ交換を要した症例は国内1001眼で1.0%、FDA試験6か月で0.5% | 術後の経過中(脱臼は強い打撲時) | 見え方が合わない、乱視の矯正力の低下 | 整復手術、サイズ変更や度数変更のためのレンズ交換 |
| 角膜内皮細胞の減少 | 減少率2.6%(平均14か月)/2.2%(6か月)/19.75%(12年) | 術後から長期にわたり経過を追う | 自覚症状が出にくい | 術前の角膜内皮細胞検査と術後の定期検査で確認 |
| 網膜剥離 | 要確認(頻度の数値は公表資料で確認できず) | 要確認 | 飛蚊症の急増、視野の欠け、光が走って見える | 術前の眼底検査と術後の定期チェック。症状が出たら早めに受診 |
出典:日本眼科学会(有水晶体眼内レンズの合併症)/同『屈折矯正手術のガイドライン(第8版)』/JSCRS 有水晶体眼内レンズ情報サイト(合併症・研究データ)/Clinical Ophthalmology, 2022(EVO/EVO+ ICLのFDA臨床試験6か月・200眼)/Moya T, et al. J Refract Surg. 2015(12年・144眼)/STAAR Surgical(3年間のFDA臨床試験629眼)
数値がばらつく理由|レンズ世代と観察期間の違いを見る
同じ合併症でも数値がばらつくのは、レンズの世代・対象となった人の集団・観察期間が調査ごとに違うためです。
白内障の0.49%と13.88%も、比べる対象が同じではありません。前者は現行ホールICLの報告で、後者は旧モデルを含む12年間の追跡結果です。
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パーセンテージだけを拾うと、印象がまったく変わってしまいます。「何眼を何年追ったか」までセットで読むのがコツです!
目の病気に関わるリスク|白内障・眼圧上昇と緑内障・角膜内皮細胞・網膜剥離
病気に関わるリスクは、ICLが原因で起きるものと、もともとの強い近視や加齢によって起きるものが混ざって語られやすい領域です。
白内障|ホールICLで発生率は大きく下がった
ICL術後の白内障は、現在主流のホールICLでは発生率0.49%と報告されています(出典:JSCRS)。中心部に孔のない以前のモデルでは1.1〜5.9%でした。
レンズ中央の孔により、水晶体とレンズの間の房水の流れが保たれます。JSCRSはこれを発生率が下がった理由に挙げています。
ホールICLのメタアナリシスでは、白内障の進行により手術が必要となった例は0%でした(Packer M. Clin Ophthalmol. 2016/2018)。
米国FDAの臨床試験でも、6か月時点(200眼・114名)で前嚢下白内障の発生は0眼。3年間の試験(629眼)での発生率は0.16%と報告されています。
仮に白内障になった場合も、ICLを摘出すれば通常の白内障手術が行えます(出典:JSCRS)。
一方で、ICLは加齢による白内障の発症そのものを防ぐ手術ではありません。年齢を重ねれば白内障の可能性は誰にでもあります。
一過性の眼圧上昇と緑内障|術前に緑内障がある人は慎重に
ICL術後の眼圧上昇は、その多くが一過性のものです。FDAの臨床試験(200眼・114名)では、術後1〜6時間の一過性眼圧上昇が36眼(18.0%)に報告されました。
同じ試験でステロイド反応による眼圧上昇は2眼、瞳孔ブロックは0眼でした。3年間の試験(629眼)でも、瞳孔ブロックおよび色素散布の報告例はありません。
術後はステロイド点眼を使うため、その反応で眼圧が上がることもあります。検診で眼圧を測るのは、この変化を早く捉えるためです。
術前から緑内障がある方は、視野欠損が悪化する可能性があるため慎重な判断が要ります(出典:JSCRS)。
日本眼科学会のガイドライン(第8版)でも、緑内障は「実施に慎重を要するもの」のひとつです。一方でJSCRSは、ICL手術後に長期に緑内障のリスクが高くなることはないとしています。
なお、もともと近視が強い人は緑内障の発症リスクが高いと知られています。ICLの有無にかかわらず、備えになるのは定期的な眼科受診です。
角膜内皮細胞の減少|術前検査と定期的な確認が要になる
角膜内皮細胞は一度減ると再生しません。そのため術前に十分な密度があるかを検査で確かめることが前提になります。
報告されている減少率は、観察期間で大きく変わります。
- 2.6%:ホールICLのメタアナリシス(4196眼・平均観察期間14か月)
- 2.2%:FDA臨床試験6か月時点(200眼・114名)
- 19.75%:12年の長期成績(144眼/Moya T, et al. 2015)
ガイドライン(第8版)では、術前スクリーニングに角膜内皮細胞検査が加えられました。STAAR Surgical公式も、合併症として角膜後面からの細胞喪失を挙げています。
角膜内皮細胞の減少は自覚症状が出にくく、検査でしか分かりません。術後も定期検査で数値を追います。
網膜剥離|術後も眼底の定期チェックを続ける
網膜剥離は、日本眼科学会が有水晶体眼内レンズの合併症に挙げる項目のひとつです。ガイドライン(第8版)の9項目にも、網膜剝離と近視性網脈絡膜萎縮が含まれます。
発生頻度は、今回参照した公表資料で確認できませんでした。気になる場合は、適応検査のときに担当医へたずねてみてください。
術前スクリーニングの13項目には眼底検査が含まれます。網膜の状態を確認したうえで、適応が判断されます。
飛蚊症の急な増加、視野の一部が欠ける、光が走って見えるといった症状が出たときは、早めに受診してください。
手術と見え方に関わるリスク|感染症・失明・レンズのズレ・ハロー・グレア
手術そのものやレンズの位置に由来するリスクは、病気とは分けて考えると整理しやすくなります。感染、レンズのズレ、見え方の変化がこれにあたる項目です。
JSCRSが挙げる12項目にも、感染症・失明の可能性・再手術・過矯正・乱視矯正ICLの回転・ICLの脱臼が並びます。
感染症(眼内炎)と失明の可能性
JSCRSは「ICL手術で失明することはまずありません。ただしごく稀ですが術後矯正視力が低下する可能性はあります」と説明しています。その原因のひとつが感染症です。
ICL術後の感染(眼内炎)は、これまでの調査で6000眼に1例ほどの割合といわれています。
適切に処置をすれば重篤になることは稀とされますが、眼内炎を起こした場合はICLの摘出が必要になることがあります。対応の速さが分かれ目です。
国内の多施設調査でも同じ傾向でした。2015年に42主要施設で行われた15011眼の前向き研究では、ICLが全体の9%・1319眼を占めました。
この研究では、感染症・白内障進行・著明な角膜内皮細胞の減少といった重篤な術後合併症が全例認められていません(Kamiya K, et al. Am J Ophthalmol. 2017;175:159-168)。
予防として、手術の3〜4日前から1日3〜4回の抗生物質点眼を行うのが一般的です。術後も指示された点眼と手指の清潔を守ります。
レンズサイズの不適合・度数ズレ・回転・脱臼と再手術
レンズの位置や度数が合わなくなった場合は、整復手術やレンズ交換で対応します。眼内に人工物を置く以上、ゼロにはできない項目です。
乱視矯正ICL(トーリック)は生体適合性が高く癒着を起こさないため、眼内で回転することが稀にあります。回転すると乱視の矯正能が低下します。
まずは位置を戻す整復手術で対応するのが基本です。それでも回転する場合は、サイズの大きいICLへの入れ替えが必要になることもあります(出典:JSCRS)。
術後に目を強く打撲すると、ICLが固定位置から外れて脱臼することがあります。速やかな整復手術が要るため、強くぶつけたときは念のため診察を受けてください。
ICL手術は近視の進行を止めるものではありません。度数が変化した場合は、ICLの交換手術で調整できます。
術後に近視・乱視が残ったり遠視になったりした場合も、レンズ交換で裸眼視力を改善できます。
実際にレンズ交換を要した割合は、国内45主要施設1001眼の調査で1.0%、FDA臨床試験6か月時点で1眼(0.5%)でした。
ハロー・グレア|夜間の光のにじみはどれくらい続く?
ハローは光源の周りに輪が見える現象、グレアは光がまぶしくにじむ現象です。日本眼科学会も合併症のひとつに挙げています。
JSCRSによれば、ICL術後に感じやすいのはグレアよりハロー。瞳の大きさがICLのレンズの部分より大きくなったときに感じることがあります。
ハローで夜間見えづらいと訴える人は少なく、多くは時間とともに気にならなくなるとも説明されています。
術前スクリーニング13項目のひとつが瞳孔径の測定です。暗いところで瞳が大きくなりやすい方は、この数値が判断材料になります。
夜間の運転が多い方は、検査の段階で執刀医に伝えておくと相談がスムーズです。
ドライアイ・老眼はICLのリスクなのか
ガイドライン(第8版)の有水晶体眼内レンズ手術の術後合併症9項目に、ドライアイは含まれていません。一方、エキシマレーザー手術(PRK・LASIK)の術後合併症には「⑩ドライアイ」が明記されています。
JSCRSも、ICLは角膜で行う手術と異なり、角膜の神経へ与える影響はとても小さいと説明しています。
ただし術前からドライアイがある方は、「実施に慎重を要するもの」の対象です。涙液検査も術前スクリーニングの項目のひとつです。
また、手術時の消毒や術後点眼などの影響で、術後1か月程度は乾燥感が続くことがあります。
症状が続く場合、『ドライアイ診療ガイドライン』(2019年)はヒアルロン酸点眼・ジクアホソルナトリウム点眼・レバミピド点眼・涙点プラグを推奨としています。
老眼は切り分けが必要です。ICLは老眼を治す手術ではなく、近視の進行を止める手術でもありません。
JSCRSは、老眼年齢(一般に40歳以上)では術後の近くの見え方も考慮して慎重に実施するとしています。
ICLが受けられない人・慎重な判断が必要な人|適応検査でみる基準
リスクの大きさは、その人の眼の状態や体質しだいです。だからこそ適応検査で「受けられる・受けられない」の線を引きます。
条件を具体的に示しているのは、JSCRSと日本眼科学会のガイドラインです。当てはまる項目があるか確認してみてください。
受けられない人(禁忌)の条件
JSCRSは、ICLに向いていない人として次の条件を挙げています。
- 18歳未満の方
- 近視がまだ進んでいる方
- 前房深度が2.8ミリより浅い方
- 進行性の円錐角膜がある方
- 白内障・緑内障・ぶどう膜炎などの目の病気を持っている方
- 通常の目薬では治らないような重度のドライアイがある方
- 傷の治りに影響する重症な糖尿病やアトピー性疾患がある方
- 妊娠中・授乳中の方
- 細かいことに対し過度に神経質になる方
前房深度とは、角膜の裏側から水晶体までの距離です。ここが2.8ミリより浅いと、レンズを置くスペースが足りないと判断されます。
これらの多くは、検査を受けて初めて分かる項目です。前房深度も角膜の状態も、自分では確かめようがありません。
慎重に検討したほうがよい人と、受けられる条件
日本眼科学会のガイドライン(第8版)は、有水晶体眼内レンズ手術の適応年齢を原則21〜45歳、屈折矯正量を6D以上の近視としています。
3D以上6D未満の中等度近視と、15Dを超える強度近視には慎重に対応するとされています。術後の経過観察は原則として6か月までです。
JSCRSが挙げる受けられる条件は、次のとおりです。
- 18歳以上(未成年は親権者の同意が必要)
- 屈折値6D以上の高度近視(15D超の最強度近視や3D以上6D未満の中等度近視は慎重に実施)
- 乱視は4.5D以内
- 近視の度数が少なくとも1年(できれば1年半)以上安定している
- 他の目の病気がない/重症の糖尿病やアトピー性疾患がない
- 妊娠中・授乳中でない
適応の範囲は少しずつ広がってきました。近視の度数は以前の-6D以上から、2019年2月の改訂で要慎重ながら-3D以上に緩和されています。
円錐角膜も、進行の停止した軽度のものや円錐角膜の疑いであれば、要慎重ながら手術を受けられるようになりました。
米国では2026年2月、FDAがEVO/EVO+ Visian ICLの適応年齢を21〜45歳から21〜60歳へ拡大承認しました。ただしこれは米国での適応であり、日本のガイドライン上の適応年齢とは異なります。
向き・不向きをもう少し生活目線で知りたい方は、ICLをおすすめしないと言われる理由と向かない人の特徴もあわせてご覧ください。
適応検査で何を調べる?13項目のスクリーニング
ガイドライン(第8版)が示す有水晶体眼内レンズ手術の術前スクリーニングは13項目です。エキシマレーザー手術の11項目に、2項目が加えられています。
- 視力/屈折値/角膜曲率半径
- 細隙灯顕微鏡/角膜形状/角膜厚
- 涙液検査/眼底/眼圧
- 瞳孔径/角膜径
- 角膜内皮細胞検査(有水晶体眼内レンズ手術で追加)
- 前眼部画像解析(前房深度を含む・有水晶体眼内レンズ手術で追加)
とくに追加された2項目が、適応判断の要になります。角膜内皮細胞の密度と前房深度は、ICL特有のリスクに直結する数値だからです。
適応検査は、手術に進むための手続きではなく、進むかどうかの線を引くための工程です。
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「検査に行く=手術を決める」ではありません。自分の眼の数値を知るだけでも、迷いはかなり整理できます。
レーシックとICL|どちらが安全かではなくリスクの種類が違う
ICLとレーシックは、リスクの種類そのものが違います。優劣ではなく、眼のどこに手を加えるかの違いが、そのまま注意点の違いです。
削るか、入れるか|リスクの発生源が違う
ICLは眼内にレンズを入れる内眼手術、レーシックは角膜を削る手術です。手を加える場所が違うため、ガイドラインが挙げる術後合併症も入れ替わります。
ガイドライン(第8版)から見たリスク構造の違い
| 項目 | ICL(有水晶体眼内レンズ) | レーシック(エキシマレーザー手術) |
|---|---|---|
| 角膜への影響 | 削らない(眼内にレンズを挿入する内眼手術) | 角膜をレーザーで削って屈折を矯正する |
| 可逆性 | 原理的には取り出して元の状態に戻せる(ただし再手術の負担は伴う) | 削った角膜は元に戻せない(不可逆) |
| ガイドラインが挙げる術後合併症 | 9項目(術後感染性眼内炎/ハロー・グレア/角膜内皮障害/術後一過性眼圧上昇およびステロイド緑内障/白内障/閉塞隅角緑内障/網膜剝離/近視性網脈絡膜萎縮/虹彩切開あるいは虹彩切除による光視症) | ドライアイを含む項目が挙げられている(⑩ドライアイ) |
| ドライアイの扱い | 術後合併症9項目には含まれない(術前からある場合は慎重に) | 術後合併症として明記されている |
| 実施に慎重を要する条件 | 緑内障/全身性の結合組織疾患/ドライアイ+軽度円錐角膜・円錐角膜疑い | 緑内障/全身性の結合組織疾患/ドライアイ/向精神薬服用者/角膜ヘルペスの既往/屈折矯正手術の既往 |
| 術前スクリーニング項目 | 13項目(角膜内皮細胞検査・前眼部画像解析を追加) | 11項目 |
ICLで中心になる課題は、感染・眼圧・白内障の管理です。レーシックは角膜を削る不可逆な変化を伴い、術後合併症にドライアイが明記されています。
戻せるかどうかの差と、ドライアイの扱いの違い
いちばんの差は、やり直しの余地があるかどうかです。ICLは取り出せば手術前の状態に戻せますが、削った角膜は元に戻せません。
『ドライアイ診療ガイドライン』(2019年)は、ドライアイ患者に対するLASIKの有用性と安全性は非ドライアイ患者と同等と考えられるとしています。
一方で、術前にドライアイの患者はLASIK後も程度が強いことが示唆されたとの記載もあります。PRK・SMILEおよび有水晶体眼内レンズの検証は、今後の課題という位置づけです。
なお、両者は排他的な選択肢でもありません。ICL術後に度数が変化した場合、角膜に問題がなければレーシック等での調整が可能とされています。
リスクを下げるために自分でできること|術前・術後の時系列
ICLのリスクは運任せではありません。施設選び・検査・術後の行動で、管理できる部分がかなりあります。
術前|執刀医と施設を確かめ、検査を急がない
ICLを執刀できるのはICL認定医です。眼科医が日本眼科学会の屈折矯正講習会に参加したあと、メーカーのライセンス承認過程を経て認定されます。
JSCRSが勧めているのは、執刀医が認定医であることに加えて、白内障手術などの内眼手術の経験が豊富な施設を選ぶことです。
また、メリットだけを謳い低料金などで手術に誘導する施設は慎重に検討するように、とも記されています。
度数決定のために、日を変えて2回の視力検査が必要です。検査当日の手術は勧められておらず、検査から手術までに待機期間が生じます。
通院のしやすさも判断材料になります。術後は検診が頻回になるためです。
術後|点眼と検診を守る。各回で何を診ているか
術後の通院は、手術翌日・(3日目)・1週間後・1か月後・3か月後・6か月後・1年後が一般的です。その後も1年に1度程度の定期検査が勧められています(出典:JSCRS)。
JSCRSによれば、とくに術後1週間が最も大切な時期です。ガイドライン(第8版)も、原則6か月までの経過観察を求めています。
定期検査で確認しているのは、視力だけではありません。
- 眼圧(一過性の上昇やステロイド反応の確認)
- レンズの位置(回転やズレがないか)
- 眼内の炎症の状態
- 点眼薬への反応
見え方が良好でも、眼圧やレンズの位置は自分では分かりません。点眼を自己判断でやめないこと、検診を飛ばさないことが、そのままリスク管理になります。
こんな症状が出たらすぐ連絡を|受診の目安
術後の症状は、急いで連絡すべきものと、多くは時間とともに落ち着くものに分けられます。
早めに連絡したい症状
- 強い充血が続く
- 強い痛みがある
- 急に視力が落ちた
- 飛蚊症が急に増えた、視野の一部が欠ける
- 目を強くぶつけた
夜間のハローや術後1か月程度の乾燥感は、多くが時間とともに落ち着く症状です。
迷ったときは、市販薬で様子を見るより先に、手術を受けた施設へ連絡してください。
費用と保証制度|自由診療だからこそ確認したいお金の話
費用の話は、リスクと地続きです。再手術やレンズ交換が必要になったとき、その費用を誰が負担するかで実際の負担額が変わります。
ICLは公的医療保険の対象外の自由診療です。クリニックが価格を自由に設定できるため、同じ手術でも費用には幅があります。
金額はレンズの種類や保証内容でも変わるため、正確な費用は各院の公式情報でご確認ください。
なお、ICLの費用は医療費控除の対象になり得ます(適用可否は国税庁の基準と個別の事情によります)。
総額の内訳は両眼の相場と内訳を解説した記事、還付額の考え方は年収別の医療費控除の記事にまとめています。
保証制度の読み解き方|再手術が必要になったときの備え
保証制度は、リスクが現実になったときの金銭的な備えとして読むと判断しやすくなります。契約前に確認しておきたいのは次の5点です。
- 度数保証の有無と期間
- レンズ入れ替えが無料になる範囲と期間
- 位置修正(整復手術)の費用の扱い
- 術後検診が無料になる回数と期間
- 保証期間を過ぎた場合にかかる費用
乱視矯正ICLの回転や打撲による脱臼では整復手術、度数変化・過矯正・低矯正ではレンズ交換が実際にあり得ます。
保証の内容と期間は院によって異なります。加えて遠方の施設だと、検診のたびに交通費と移動時間がかかる点も見落とせません。
よくある質問
Q. ICLの長期的なリスクはありますか?
A. 長期データはありますが、旧モデルの数値がそのまま現行レンズに当てはまるわけではありません。
Q. ICL手術で失明するリスクはありますか?
A. JSCRSは、ICL手術で失明することはまずないと説明しています。
Q. ICL手術で白内障になるリスクは高いですか?
A. ホールICLでの白内障の発生率は0.49%と報告されています。
Q. ICLで緑内障になるリスクはありますか?
A. JSCRSは、ICL手術後に長期に緑内障のリスクが高くなることはないとしています。
Q. ICLは網膜剥離になるリスクが高いですか?
A. 日本眼科学会は網膜剥離を合併症のひとつとして挙げていますが、頻度の数値は公表資料で確認できませんでした。
Q. ICLのレンズは取り出せますか?交換にリスクはありますか?
A. 原理的にはレンズを取り出して元の状態に戻せます(再手術には相応の負担があります)。
まとめ|リスクは頻度と対処法まで知れば、落ち着いて判断できる
ICLのリスクはゼロではありません。頻度と時期と対処法まで知れば、不安は判断材料に変わります。
- ✔ホールICLの白内障発生率は0.49%(旧モデル1.1〜5.9%)
- ✔JSCRSは失明はまずないとし、ごく稀な矯正視力の低下に言及
- ✔受けられない条件は、13項目の術前スクリーニングで分かる
- ✔原理的には取り出して元の状態に戻せる(再手術の負担は伴う)
判断を分けるのは眼の状態です。見送る結論も含めて、眼科医にご相談ください。
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気になる症状や持病は、予約のときに伝えておくと当日がスムーズです。

