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ICLの安全性は?失明リスクと合併症の発生率を公的データで解説

※この記事にはプロモーションが含まれています。

「目の中にレンズを入れたままで、本当に大丈夫なのだろうか」——ICLを調べるほど、その不安は大きくなりがちです。

  • 「失明」「後遺症」という言葉を見て、怖くなってしまった
  • 合併症がどのくらいの頻度で起きるのか、数字で知りたい
  • 10年、20年先も同じ目のままでいられるのか分からない

体験談や口コミには、良い話と怖い話が入り混じっています。どちらを信じればいいのか、迷ってしまいますよね。

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性は、学会や公的機関が公開している数値の範囲で見ていくと輪郭がはっきりします。

この記事の結論

  • ICLの安全性は「高い安全係数」と「ゼロではない合併症頻度」の両方で理解する
  • 多施設研究や長期の追跡研究で高い安全性の指標が報告される一方、合併症の頻度はゼロではありません。
  • 手術で失明することは「まずない」とされるが、視力の変化まで否定はできない
  • ごく稀に術後の矯正視力が下がる可能性はあり、その原因のひとつに感染症が挙げられています。
  • 安全性は、適応・術者・施設の条件がそろってはじめて成り立つ
  • 適応検査・執刀医の要件・術後の経過観察。この3つで、同じ手術でもリスクの大きさは変わります。

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性は、どこまで確認されているのか

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性は、学会の研究で高い安全係数が報告されています。ただし、合併症が起きる頻度はゼロではないとされます。

安全係数とは、術後の最高矯正視力を術前の最高矯正視力で割った指標です。1.0を上回るほど、矯正したときの見え方が下がっていないことを示します。

この記事が根拠にしている情報
  • 日本眼科学会『屈折矯正手術のガイドライン(第8版)』(令和6年2月10日公表)
  • JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)ワーキンググループの多施設共同研究
  • 査読つき医学雑誌に載ったメタアナリシスと長期成績の報告
  • FDA(米国食品医薬品局)の有害事象データベースを解析した研究

同ガイドラインは、有水晶体眼内レンズ手術の術後合併症として9項目を挙げました。「成績が良い」と「リスクがない」は別の話です。

国内外の研究で確認されている安全性のライン

研究で確認されている安全性のラインは、数か月から10年程度の追跡で矯正視力が保たれたという範囲です。重篤な合併症の報告もありませんでした。

  • 国内42主要施設・屈折矯正手術15011眼の前向き研究で、ICLは9%(1319眼)を占めた
  • その研究では感染症・白内障進行・著明な角膜内皮細胞の減少といった重篤な術後合併症を全例で認めなかった
  • 国内45主要施設・ICL 1001眼の調査では矯正視力1.0以上が99%、裸眼視力1.0以上が94%
  • 同じ調査でレンズ交換を要した症例は1.0%だった
  • ホールICLのメタアナリシス(4196眼)で安全係数1.15、角膜内皮細胞密度の減少率は2.6%
  • 10年追跡した54名103眼の報告では安全係数1.12±0.12

メタアナリシスでは、白内障の進行によって手術が必要になった例は0%。従来型のレンズでの報告は0〜1.8%でした。

それでも『安全です』と言い切れない理由

ICLは眼の中にレンズを入れる手術なので、合併症の頻度がゼロになるとは言えません。報告されている数値も、施設・症例・レンズの世代によって差が出ます。

  • JSCRSの解説ページにある白内障0.49%、眼内炎6000眼に1例は、母集団や調査年の記載がなく分母が分からない
  • FDAの有害事象データベースを解析した研究は、自発的な報告に基づくため発生率そのものは算出できないとされる
  • 研究ごとに対象者も追跡期間も異なり、数字をそのまま横並びにできない

いつ・どの施設で・何眼を対象にした調査なのか。そこまで合わせて見れば、数値を過大にも過小にも受け取らずに済みます。

編集部
編集部
 
 

気になった数値は書き留めておき、適応検査のときに尋ねてみてください。

そもそもICLとは?ホールICLの仕組みと『角膜を削らない』意味

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、眼内に小さなレンズを挿入して近視・乱視を矯正する手術です。角膜を削らずに矯正する点が、レーザーで角膜を削る方法との違いになります。

公的な文書では、「有水晶体眼内レンズ」というカテゴリ名で記載されています。

ICL手術の基本
  • 角膜を削らず、眼内にレンズを入れて近視・乱視を矯正する
  • 片眼の手術は数分程度の日帰りで、傷口が小さいため縫合は不要とされる

中央に孔のあるホールICLで何が変わったのか

ホールICLは、レンズの中央に小さな孔が開いたタイプです。この孔により、目の中を流れる水(房水)の通り道が術前と同じように保たれます。

JSCRSの解説によれば、術後の白内障は中心部に孔がない以前のモデルで1.1〜5.9%。孔のある現在主流のホールICLでは0.49%と報告されているとのことです。

インターネット上で見かける高めの白内障の数値は、孔がない旧世代モデルの時期のデータかもしれません。

数字を見るときは、どの世代のレンズの話なのかまで確かめてみてください。

取り出せるという可逆性の正確な意味

ICLの可逆性とは、入れたレンズを摘出できるという意味です。

JSCRSは、ICLは何年経過しても眼内から摘出することが容易だとしています。

抜去した場合は、手術前と同様にメガネやコンタクトレンズで視力を矯正できるとされます。

加齢などで白内障になった場合も、ICLを摘出したうえで通常の白内障手術と同じように行えると記載されています。

ただし抜去そのものも手術であり、目に関わるすべてが元通りになるという意味ではありません。

一方、角膜を削るレーシックは、削った角膜を戻せない不可逆な手術。この差が、ICLの安全性を考えるときの出発点になります。

編集部
編集部
 
 

「外せる」と聞くと気軽に思えますが、外すときもやはり手術です。入れる前の適応検査で見極めておきましょう。

安全性の根拠①|公的承認の時間軸と世界の実績

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性の土台は、日本と米国それぞれの公的機関が審査したうえで承認している点です。

国内で承認されている有水晶体眼内レンズは、後房型のICLだけ。臨床治験から認可まで、段階を踏んで確認が重ねられてきました。

日本と米国での承認の流れ(年表)

日本と米国では、承認の時期も対象となる年齢の範囲も異なります

2003年 国内で臨床治験がスタート
2010年 厚生労働省が認可
2014年 最新型のホールICL(Hole ICL)が承認
2022年3月 米国FDAがEVO/EVO+ Visian ICLを承認(適応21〜45歳、近視-3.0〜-20.0D、乱視1.0〜4.0D)
2026年2月 米国FDAが適応年齢を21〜60歳へ拡大承認
※米国での適応。日本の基準とは異なります

2026年2月の拡大承認の根拠になったのは、629眼を3年間追跡したFDA臨床試験です。3年時点の安全係数は1.25、前嚢下白内障の発生率は0.16%と報告されました。

ここで混同しやすいのが年齢の条件です。21〜60歳は、あくまで米国での適応にあたります。

日本眼科学会『屈折矯正手術のガイドライン(第8版)』は原則21〜45歳。日本で手術を受ける場合の目安は、この国内ガイドラインのほうです。

編集部
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「21〜60歳まで受けられる」という記載を見かけたら、どの国の基準かをご確認ください。国内の目安は原則21〜45歳です。

世界の累計実績と国内多施設研究の成績

ICLの全世界累計販売枚数は400万枚を突破し、販売国は85カ国以上にのぼります。スターサージカルが2026年6月24日に発表した数字です。

日本眼科学会の一般向けページには、世界全体で300万件以上の手術実績と記載されています。

ただし公表の時点が異なり、レンズの販売枚数か手術件数かという数え方も違います。2つの数字は単純には比べられません。

国内の多施設研究でわかっていること
  • 42施設15,011眼の前向き研究(2015年)でICLの平均裸眼視力は1.41
  • 同研究で目標屈折度数±0.5D以内が88%、±1.0D以内が99%
  • 45施設1,001眼のアンケート調査は2014年に実施

安全性の根拠②|学会ガイドラインが定める術者要件と13項目の術前検査

ICLの安全性は、誰が執刀し、どんな検査を経て、術後どこまで診るかまでガイドラインで定められています。手術の技術だけで語られるものではありません。

術中の厳重な感染対策と、原則6か月までの術後の経過観察も、同じガイドラインが求める内容です。

その正本が、日本眼科学会屈折矯正委員会がまとめた『屈折矯正手術のガイドライン(第8版・2024年)』。令和6年2月10日付で公表されました。

掲載先は、日本眼科学会雑誌128巻2号135〜138頁です。2023年3月22日にSMILEが承認されたことを受け、第7版にこの術式を加えた改訂版にあたります。

インフォームド・コンセントの項では、施術者が合併症と問題点を十分に説明し、同意を得ることが必要とされました。

なかでも次の3点は、十分な説明が望まれると明記されています。

  • 眼鏡やコンタクトレンズなど、ほかの矯正方法が存在すること
  • 3D以内の近視は、老視年齢に達したときにデメリットが生じる可能性があること
  • 手術後に何らかの疾病で受診したときは、この手術の既往を担当医に申告すること

執刀できる医師の条件

ICLを執刀できる医師の必須条件は、日本眼科学会認定の眼科専門医であることです。

第8版の『1.術者』は、屈折矯正手術を眼科専門領域で取り扱うべき治療法と位置づけました。

条件はもう一段あります。角膜・水晶体を含む前眼部の生理や疾病、そして眼光学に精通していることも必須です。

さらに施術に際しては、日本眼科学会が指定する屈折矯正手術講習会と、製造業者が実施する講習会の両方の受講が求められます。

JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)も、ICL認定医になるには段階が要るとしています。学会の屈折矯正講習会に参加し、そのうえでメーカーのライセンス承認過程を経る流れです。

術前スクリーニング13項目

ガイドライン第8版は、有水晶体眼内レンズ手術の術前スクリーニングとして13項目の検査を求めています。

  1. 視力検査(裸眼および矯正)
  2. 屈折値検査(自覚・他覚・散瞳下)
  3. 角膜曲率半径計測
  4. 細隙灯顕微鏡検査
  5. 角膜形状検査
  6. 角膜厚測定
  7. 涙液検査
  8. 眼底検査
  9. 眼圧測定
  10. 瞳孔径測定
  11. 角膜径測定(特に水平方向の径に留意する)
  12. 角膜内皮細胞検査
  13. 前眼部画像解析(前房深度を含む解析)

このうち角膜内皮細胞検査と前眼部画像解析は、エキシマレーザー手術の11項目に追加される検査です。眼内にレンズを置く術式ならではの項目といえます。

編集部
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適応検査は、これだけ多岐にわたる項目を一度に確認する場です。瞳孔を広げる散瞳下の検査も含まれるため、車の運転を控える前提で予定を組んでおくと安心できます。

合併症の種類と発生頻度【数値一覧表】

ICL(眼内コンタクトレンズ)で起こりうる合併症は9項目です。屈折矯正手術のガイドライン(第8版・2024年)に挙げられています。

主要な合併症は、学会や臨床試験・査読論文で発生頻度が数値で公表されています。追跡期間もあわせて一覧にしました。

ICLの合併症と報告されている発生頻度

合併症 報告されている発生頻度 出典・研究(追跡期間)
術後感染性眼内炎 6000眼に1例ほど JSCRS(母集団・調査年の記載なし)
白内障(前嚢下白内障) ホールICL 0.49%/中心孔のない旧モデル 1.1〜5.9%
3年間の臨床試験(629眼)0.16%
8年追跡(177眼)1.7%(3眼)
JSCRS/FDA適応拡大の根拠となった3年間の臨床試験/Kamiya K ほか(Frontiers in Medicine、2021年・平均6.3±1.7年)
術後一過性眼圧上昇・ステロイド緑内障 術後1〜6時間の一過性上昇 18.0%(200眼中36眼)/ステロイド反応による上昇 2眼
8年追跡で25mmHgを超える上昇 0%
EVO/EVO+のFDA臨床試験(Clinical Ophthalmology 2022、200眼・114名、6か月)/Kamiya K ほか 2021年
角膜内皮障害(内皮細胞の減少) 6か月 2.2%/8年 3.6±7.0%/10年 5.3%(114眼)
旧V3モデルを含む世代の12年 19.75%(144眼)
FDA臨床試験 2022/Kamiya K ほか 2021年/Nakamura T ほか(Am J Ophthalmol、2019年)/Moya T ほか(J Refract Surg、2015年)
ハロー・グレア 術後5年でグレアの自覚 72.7%(16/22名)/気になると回答 31.8%(7/22名・すべて軽度)/夜間運転に軽度の問題 18.2% Chen X ほか(BMC Ophthalmology 2025年、22名44眼・5年)※少数例の単施設研究
閉塞隅角緑内障(瞳孔ブロック) FDA臨床試験6か月 0眼/8年追跡 0% FDA臨床試験 2022/Kamiya K ほか 2021年
網膜剝離/近視性網脈絡膜萎縮/虹彩切開・虹彩切除による光視症 ガイドラインに合併症として記載。公表資料では頻度未確定 屈折矯正手術のガイドライン(第8版・2024年)
レンズ交換・整復(9項目以外) レンズ交換 1.0%(国内45施設・1001眼)/整復 1.1%(2眼)・サイズ変更 0.6%(1眼) JSCRSのアンケート調査/Kamiya K ほか 2021年(8年)

※研究ごとに母集団・追跡期間・レンズ世代が異なるため、数値の単純な横並び比較はできません。旧モデルの数値は現在主流のホールICLとは分けて読んでください。

術後感染性眼内炎

術後感染性眼内炎は、眼の中に細菌が入って起こる合併症です。JSCRSは「これまでの調査で6000眼に1例ほどの割合といわれています」と記載しています。

同学会によれば適切に処置をすれば重篤になることは稀。ただし眼内炎を起こした場合はICLの摘出が必要になることがあるとも書き添えられています。

予防の柱は抗生物質の点眼です。眼内手術のため、一般に手術の3〜4日前から1日3〜4回の点眼で感染症を予防します。

白内障(前嚢下白内障)

白内障の発生頻度は、レンズの世代で大きく違います。JSCRSによれば中心孔のない旧モデルは1.1〜5.9%、中央孔のあるホールICLでは0.49%でした。

新しいデータほど数値は下がります。FDA適応拡大の根拠となった3年間の臨床試験(629眼)では、前嚢下白内障0.16%でした。

8年を追ったKamiya Kほかの研究(177眼、2021年)は1.7%(3眼)。この3眼はいずれも術前から軽度の前嚢下混濁がありました。

白内障になったあとの道筋も示されています。JSCRSによれば、ICLを摘出したうえで通常の白内障手術と同じように手術が行えます。

一過性眼圧上昇・緑内障

眼圧上昇は「一過性」と「長期」に分けて見ると分かりやすくなります。

EVO/EVO+のFDA臨床試験(200眼)では、術後1〜6時間の一過性上昇が36眼(18.0%)。ステロイド反応による上昇は2眼、瞳孔ブロックは0眼でした。

ホールICLの8年成績では、25mmHgを超える眼圧上昇と瞳孔ブロックがいずれも0%。JSCRSも、長期に緑内障のリスクが高くなることはないとしています。

注意が要るのは条件のある人です。術前から緑内障がある人は視野欠損が悪化する可能性があり、手術を慎重に考える必要があるとJSCRSは記載しています。

近視が強い人ほど緑内障の発症リスクが高い点も、術前の確認に含まれます。

ハロー・グレア(夜間のにじみ・まぶしさ)

ハロー・グレアは、夜間に光源のまわりに光の輪が見えたり、光がにじんで見えたりする症状です。瞳がレンズ部分より大きくなったときに感じることがあります。

多くは時間とともに気にならなくなるとJSCRSは説明しています。

術後5年でグレアを自覚したのは72.7%(16/22名)。「気になる」と答えたのは31.8%(7/22名)で、いずれも軽度でした。

5年間の前向き観察による報告です(Chen Xほか、BMC Ophthalmology 2025年、22名44眼)。

夜間運転に軽度の問題があったのは18.2%(4/22名)。グレア自体は術後1週間で有意に低下し、1ヶ月以降は安定しています。

見え方の質が気になる方は、ICLが向かない人の特徴とデメリットもあわせてご確認ください。

角膜内皮細胞の減少

角膜内皮細胞は、いちど失われると再生しません。だからこそ長期のデータが重視されます。

報告されている減少率は、6か月で平均2.2%、8年で3.6±7.0%、10年で5.3%。10年の数値はNakamura Tほか(2019年、61名114眼)の報告です。

ただし、この10年5.3%は対象に旧世代レンズを含む研究での報告値です。現行のホールICLの10年成績とは切り分けて読む必要があります

一方、旧V3モデルを含む世代の12年追跡では平均19.75%の減少という報告もあります(144眼)。数値はレンズ世代とセットで読んでください。

屈折矯正手術のガイドライン(第8版・2024年)は、角膜内皮細胞検査を術前スクリーニングの必須項目としています。自分の内皮細胞数は術前検査で分かります。

レンズサイズ不適合・ボールト異常と入れ替え

ボールトとは、ICL後面と水晶体前面のあいだの間隙です。理想的な範囲は200〜800μmとされています。

予測式に関する研究が示した数値です(Wu Hほか、Frontiers in Medicine、2023年、100名179眼)。

範囲を外れると別の問題につながります。低すぎると前嚢下白内障を生じるとされています。

高すぎるとICLが周辺前房を圧迫し、隅角閉塞と緑内障の発症につながるとの指摘もあります。関係する術前因子は前房深度・瞳孔径・眼軸長です。

入れ替えが必要になる割合も分かっています。JSCRSのアンケート調査(国内45施設・ICL1001眼)ではレンズ交換1.0%でした。

8年成績ではICL整復1.1%(2眼)、サイズ変更0.6%(1眼)です。

乱視矯正ICLは、眼内で回転すると矯正効果が弱くなることがあります。その場合は整復術や、大きいサイズへの入れ替えを行います。

過矯正(遠視化)も、交換手術で適正な度数に変更できるとされています。

編集部
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ここに並ぶ数値は、研究に参加した人たちの平均値です。ご自身の検査結果と照らし合わせて読むのが近道になります。

ICLで失明する可能性はあるのか

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術で失明することは、まずありません。ただし、ごく稀に術後の矯正視力が低下する可能性はあります。

その原因のひとつに挙げられているのが感染症です(日本白内障屈折矯正手術学会)。

視力が下がるとしたら何が起きたときか

視力低下の引き金として名前が挙がるのは、眼の内部に炎症が起きる眼内炎です。報告されている頻度はごくわずかにとどまります。

適切に処置をすれば重篤になることは稀と同学会は説明しています。

それでもレンズの摘出が必要になる場合はあると記載されています。痛みや見え方の異変を放置しないことが、視力を守るうえでの分かれ目です。

屈折矯正手術のガイドライン(第8版)が挙げる術後合併症9項目には、網膜剝離と近視性網脈絡膜萎縮も含まれます。見え方に関わる合併症が想定されているからこそ、術後の定期的な確認が前提とされています。

米国に報告された不具合25,011件の内訳

米国に集まった報告のうち、最も多い分類は「患者への影響なし」でした。患者に関わる報告では視覚の問題が最多で、眼圧の問題、レンズ関連の問題と続きます。

FDAの有害事象データベース(MAUDE)に報告された内容の内訳(2015〜2023年・25,011件)

報告された内容 球面ICL トーリックICL
患者への影響なし 53.4% 60.4%
視覚の問題 11.6% 12.7%
眼圧の問題 6.6% 5.0%
レンズ関連の問題 2.3% 0.9%

解析したのはChen Qほかの研究グループです。対象は米国FDAの有害事象データベースにある2015〜2023年の25,011件。

報告は2025年7月21日、Frontiers in Medicineに掲載されました。

ただし、このデータベースは医療機関などからの自発的な報告を集めたものです。報告のない事例は含まれず、ここから発生率そのものは算出できません

どんな不具合が報告されているか、その傾向として読むのが適切です。

5年・10年の長期データで分かっていること/まだ分かっていないこと

現行のホールICL(V4c)の10年追跡では、安全係数1.12と報告されています。期間を通じて白内障形成・隅角閉塞・緑内障・ICL摘出の発生は認められませんでした

報告したのはChung Bほかのグループです(Am J Ophthalmol、2025年1月、54名103眼)。

一方、20年を超える追跡結果はまだ出そろっていません。ネット上で見かける高めの白内障発生率も、多くは中心孔のない旧世代レンズの成績です。

世代の違いは数値そのものにはっきり表れます

ホールICLの8年・10年成績

ホールICLの8年・10年成績は、安全係数がいずれも1.1台です。術前の矯正視力が保たれているという報告が中心になります。

ホールICL(現行世代)の長期成績

項目 10年追跡
103眼
8年追跡
177眼
北里大学8年
41眼
安全係数 1.12±0.12 1.18±0.24 1.13±0.27
有効係数 1.11±0.13 0.89±0.28 0.83±0.36
角膜内皮細胞の減少 指数関数的な減衰 3.6±7.0% 術前比6.2%

10年追跡では、矯正視力が1行以上下がったのは2%、1行以上上がったのは59%でした。

8年追跡の数値は、Kamiya Kほかの報告によります(Frontiers in Medicine、2021年、8年時点60眼)。

北里大学の8年追跡では、臨床的に問題となる症候性白内障が4.9%(2眼)に生じました。目標度数±1.0D以内は85.4%です(Igarashi Aほか、Am J Ophthalmol、2014年)。

旧世代レンズの長期データとの違い

旧世代レンズの長期データは、現行のホールICLより白内障関連の数値が高く出ている点が最大の違いです。

中心孔のない旧世代ICLを10年追った研究があります(78例133眼、1998年1月〜2004年12月手術)。

  • 水晶体混濁の発生率は5年後40.9%、10年後54.8%
  • 白内障手術は5年後5眼(4.9%)、10年後18眼(18.3%)
  • 10年後の時点で12眼(12.9%)に局所薬物治療を要する高眼圧症

報告したのはスイスのJules-Gonin Eye Hospitalです。JAMA Ophthalmologyオンライン版2016年3月3日号に掲載されました。

12年を追った研究では、臨床的に問題となる白内障が13.88%でした。角膜内皮細胞密度は平均19.75%の減少です(Moya Tほか、J Refract Surg、2015年、144眼)。

この白内障発生は旧V3モデルの使用と有意に関連していました。著者らは最新モデルでは発生率が低いと結論づけています。

後房型有水晶体眼内レンズの10年後ろ向き研究では、術後5〜10年に前嚢下白内障を発症したのが12眼(10.5%)。うちICL摘出と水晶体乳化吸引術を要したのは4眼(3.5%)です。

10年時点の安全係数は0.88±0.15。数値はNakamura Tほか(Am J Ophthalmol、2019年10月、61名114眼)の報告によります。

いずれも旧世代レンズを含む成績です。数字を見かけたら、どのレンズ世代の話かをまず押さえてください。

まだ分かっていないこと

まだ分かっていないのは、20年を超える期間、眼の中でどう経過するかです。国内で最新型のホールICLが承認されたのは2014年で、追跡データは蓄積の途中にあります。

  • 20年超の長期成績と、大規模な10年超データ
  • 10年成績は数十〜百眼規模の報告が多く、まれな合併症の頻度を出しにくい
  • 角膜内皮細胞密度とボールトの減り方が、10年より先にどう推移するか

10年追跡の報告では、角膜内皮細胞密度とボールトがいずれも指数関数的な減衰を示しました。一定のペースで直線的に減るわけではありません。

そのため、10年時点の数値から先を単純に計算することはできません

だからこそ、長期の定期検診が前提になります。屈折矯正手術のガイドライン(第8版)は、原則として術後6か月まで経過観察を行うとしています。

その後も、一般検査の中で長期経過を見守ることが望ましいとされています。

編集部
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分からない部分があると知っておくほうが、かえって判断はしやすくなります。年1回の検診を続ける前提で、先の予定を組み立てておきましょう。

安全性を左右するのは『人と施設』|受診前チェックリスト

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性は、同じ術式でも「誰が、どんな体制で行うか」で条件が変わります

受診前に確認したい7項目

  • 執刀医が眼科専門医で、学会の講習会とメーカー講習を修了したICL認定医か
  • 白内障手術などの内眼手術の経験が豊富な施設か
  • 術前検査がガイドラインの13項目を満たし、レンズサイズ決定の根拠を説明してくれるか
  • 前眼部画像解析で前房深度や角膜径まで計測しているか
  • 適応検査を受けたその日に手術を勧めてこないか
  • 術後の定期検診と、異常が出たときの受診体制が示されているか
  • メリットだけを強調し、低料金で手術へ誘導していないか

最後の項目は、JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)の呼びかけにもとづきます。メリットだけを謳って低料金で手術へ誘導する施設は、慎重に検討するよう促されています。

通院の続けやすさも判断材料になります。候補を広げて比べたい方は、東京のICLクリニックを費用相場と選び方から比較した記事も同じ観点で確認できます。

レーシック手術では、危害が発生したという情報が80件寄せられました。消費者庁消費者安全課の注意喚起(平成25年12月4日)に示された件数です。

手術前のリスク等の説明を「受けて理解した」と答えた人は74.7%。手術後一定期間に検査を受けていない・受けなかった人は33.5%でした。

術式は違っても、通い続けられる体制かどうかを先に確かめる意味は変わりません。

執刀医の資格とICLインストラクター

ICLを執刀する医師は、日本眼科学会の屈折矯正講習会に参加し、メーカーのライセンス承認過程を経てICL認定医となります。JSCRSがそう説明しています。

ガイドライン(第8版)も、術者の条件を定めています。眼科専門医であり、学会指定の講習会と製造業者の講習会の両方を受けた者、という内容です。

その上位にあたるのがICLインストラクター(指導医)です。STAAR Surgical社が認定する、ICL執刀医を指導する立場の資格を指します。

確かめ方はシンプルです。公式サイトの医師紹介ページに、認定資格と眼科専門医の記載があるかを見ます。

内眼手術の経験が豊富かどうかも、JSCRSが施設選びの目安に挙げています。

適応検査当日の手術を勧めない理由

JSCRSは、適応検査当日の手術は勧められないとしています。理由は2つです。

ひとつは度数の決定に慎重さが求められること。日を変えて2回の視力検査を行います。

もうひとつは感染症の予防です。眼内の手術にあたるため、一般に手術の3〜4日前から1日3〜4回の抗生物質点眼を行います。

ガイドライン(第8版)も、術中の高度バリアプレコーションズの遵守を求めています。器具の滅菌、術野の消毒とドレーピングも厳格に行うこととされています。

検査当日にそのまま手術を提案された場合は、いったん持ち帰って判断してください。

編集部
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適応検査で聞いた前房深度や角膜径の数値は、その場で書き留めておくと後の比較が楽になります。検診の間隔と、異変が出たときの連絡先もあわせて。

レーシック・コンタクトレンズ常用と比べた安全性

ICL(眼内コンタクトレンズ)とレーシック、コンタクトレンズ常用は、起こりうるトラブルの種類そのものが違います。一列に並べて順位づけできる関係ではありません。

屈折矯正手術のガイドライン(第8版)にも、その違いが表れています。有水晶体眼内レンズ手術とエキシマレーザー手術では、挙がっている術後合併症の顔ぶれが違うのです。

ICL・レーシック・コンタクトレンズ常用のリスクの内訳

項目 ICL(有水晶体眼内レンズ) レーシック(エキシマレーザー手術) コンタクトレンズ常用
角膜への侵襲 角膜を削らない 角膜を削る 手術は行わない
可逆性 レンズを摘出できる 削った角膜は戻せない 装用をやめられる
ガイドライン記載の術後合併症 9項目 10項目 —(手術ではない)
ドライアイの扱い 9項目に含まれない 10項目に含まれる
報告されている眼のトラブル 感染症、ハロー・グレアなど 角膜感染症、不正乱視、フラップ異常など 使用者の7〜10%に眼障害が発生していると推察(日本眼科医会)

レーシックとの合併症の内訳の違い

ICLとレーシックの合併症は、項目の数より中身が違います

ガイドライン(第8版)は、エキシマレーザー手術の術後合併症を10項目挙げています。

疼痛、角膜感染症、ハロー・グレア、不正乱視、ステロイド緑内障、上皮下混濁。加えてIatrogenic keratectasia、フラップ異常。残る2つはDiffuse lamellar keratitis、ドライアイです。

一方の有水晶体眼内レンズ手術は9項目で、そこにドライアイは入りません。ガイドラインに並ぶ合併症の顔ぶれが、両者で異なります。

戻せるかどうかも別物です。ICLは何年経過しても眼内から摘出することが容易とされています。抜去した場合は、メガネやコンタクトレンズで矯正できます。

削った角膜を戻す手立ては、レーシックにはありません。

消費者庁消費者安全課は、平成25年12月4日に注意喚起を公表しました。レーシック手術で危害が発生したという情報が80件寄せられています。

最も多かったのは過矯正による遠視でした。頭痛や吐き気で日常生活に支障が出た例もあります。

コンタクトレンズを使い続けた場合のリスク

コンタクトレンズを使い続ける選択にも、眼障害という別のリスクがあります。

日本眼科医会は、これまでのアンケート調査をもとに推察を示しています。使用者の7〜10%に眼障害が発生している、という内容です。

平成18年6月20日から平成19年7月4日までの203件の集計では、充血や異物感、目の痛みが目立ちました。診断ではアレルギー性結膜炎が最多で、重篤な角膜浸潤も約8%報告されています

障害の割合が高かったのは、1日使い捨てや2週間頻回交換のソフトコンタクトレンズです。装用方法や装用日数を守っていない人がいることも明らかになりました。

微生物性角膜炎の推定年間発生率も、レンズの種類と装用の仕方で差が出ます(装用者1万人あたり)。

  • 連日装用のハードコンタクトレンズ(RGP):1.1件
  • 連日装用のソフトコンタクトレンズ:3.5件
  • 終日装用(extended wear)のソフトコンタクトレンズ:20件
編集部
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迷ったときは「どれが安全か」ではなく「自分はどのリスクなら受け入れられるか」で並べ直すと、考えが前に進みます。

安全性が担保できないケース|禁忌・適応外と慎重に扱う条件

ICLの安全性を示すデータは、あくまで適応条件を満たした目で手術を受けた人のものです。

屈折矯正手術のガイドライン(第8版)は、2つの区分を示しています。有水晶体眼内レンズ手術の「禁忌」と、「実施に慎重を要するもの」です。

ここから外れる状態では、報告されている合併症の頻度がそのまま自分に当てはまるとは限りません。適応検査は、その線引きを自分の目で確かめる場です。

禁忌とされる状態

禁忌にあたるのは、目の炎症・水晶体の異常・全身の状態・目の内部構造に関わる8つの条件です。

ガイドライン(第8版)が挙げる禁忌
  • 活動性の外眼部炎症
  • 白内障(水晶体の混濁や亜脱臼などの異常を含む)
  • ぶどう膜炎や強膜炎にともなう活動性の内眼部炎症
  • 重症の糖尿病や重症のアトピー性疾患など、傷の治りに影響しうる全身性・免疫不全の疾患
  • 妊娠中または授乳中
  • 進行性円錐角膜
  • 浅前房
  • 角膜内皮障害

日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)も、向いていない方の例を挙げています。

18歳未満の方、近視がまだ進んでいる方、進行性の円錐角膜の方、重度のドライアイの方などです。前房深度(角膜の裏側から水晶体までの距離)が2.8ミリより浅い方も含まれます。

前房の深さや角膜内皮の状態は、自覚症状では分かりません。術前検査で初めて確認できる項目です。

実施に慎重を要する状態と年齢・度数の目安

慎重を要する状態は、手術ができないという意味ではありません。条件を個別に見極めたうえで判断するグレーゾーンです。

項目 目安
慎重を要する状態 緑内障、全身性の結合組織疾患、ドライアイ、矯正視力が比較的良好で進行の止まった軽度の円錐角膜、円錐角膜の疑い
適応年齢 原則21〜45歳。老視年齢の方は水晶体の加齢変化を考慮して慎重に
近視の度数 6D以上が原則。3D以上6D未満、15Dを超える強度近視は慎重に(2019年2月の改訂で要慎重ながら-3D以上に緩和。レンズの度数規格は-1.0〜-18.0D)
乱視 4.5D以内
度数の安定 近視の度数が少なくとも1年、できれば1年半以上安定していること

度数の安定が条件になるのは、ICLが近視の進行そのものを止める手術ではないからです。

JSCRSは、矯正後も生活習慣などで近視が進み、3〜4年後に視力が下がることもあるとしています。

安全性以外の制約(費用・待機期間・老視)

ICLは公的医療保険の対象外の自由診療です。クリニックが価格を自由に設定できるため、費用は院ごとに異なります

金額の目安や内訳は、両眼の相場と費用の内訳をまとめた記事をご覧ください。

時間の制約もあります。検査から手術まで日数が必要になるため、思い立ったその日に受けられる手術ではありません。

年齢による制約も見落とせません。ガイドライン(第8版)は、適応年齢を原則21〜45歳としています。老視年齢の方への施術については慎重に、との但し書きつきです。

さらに3D以内の近視については、老視年齢に達したときにデメリットが生じる可能性を説明するよう求めています。近視が弱い方ほど、手元の見え方まで含めた相談が欠かせません。

術後の経過観察と、すぐ受診すべきサイン

ICL(眼内コンタクトレンズ)の術後は、決められた検診をすべて受けることが安全性を保つ条件です。異変を感じたら、予約日を待たずに連絡してください。

術後の通院ペースと検査で診る項目

通院は手術翌日から始まり、1年後以降は年1回程度に落ち着きます。間隔の目安は、日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)の解説に示されています。

ICL術後の一般的な通院スケジュール

時期 主に確認すること
手術翌日 細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)で眼の中を観察し、異常がないか確認する
3日目・1週間後 術後1週間が最も大切な時期とされ、経過を細かく確認する
1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月後 見え方とレンズの状態が落ち着いているかを確認する(ガイドラインも原則6か月までの経過観察を求めている)
1年後・以後は年1回程度 一般の眼科検査の中で長期の経過を見守る

定期検査で診るのは視力だけではありません。眼圧、レンズの位置、眼内の炎症、点眼薬への反応まで確認します。

手術当日は一過性の眼圧上昇が起こることもあります。手術終了から2時間以上は、院内で様子をみることが望ましいとされています。

検診の取りこぼしは、けっして珍しい話ではありません。レーシックに関する公的な注意喚起にも、その数字があります。手術後の一定期間に検査を受けていない人の割合は33.5%でした。

編集部
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検診日は手術前にまとめて手帳やスマホへ入れておくと、うっかり忘れを防げます。予定が合わない日が出そうなら、早めに医療機関へ相談しておくと安心です。

予約日を待たずに連絡したい変化

充血・強い痛み・急な見えにくさ・眼の打撲。この4つは、次の予約日を待たずに連絡してよいサインです。

予約日を待たずに受診したいサイン

  • 目が急に赤くなり、充血が引かない
  • ずきずきするような強い痛みが続く
  • 見え方が急に悪くなった、かすんで戻らない
  • ぶつけるなどして眼を強く打った

眼を強く打撲すると、ICLが固定位置から外れて脱臼することがあります。速やかな整復手術が必要になるため、念のため診察を受けてください。

眼内炎は、術前後の抗生物質の点眼で防ぐことが大切とされています。起きてしまうとICLの摘出が必要になることがあります。処方された点眼薬は、自己判断でやめないでください。

症状が軽いか重いかを、自分で判断する必要はありません。気になる変化があれば、まず手術を受けた医療機関に電話で連絡し、指示を仰ぎましょう。

よくある質問(ICLの安全性について)

Q. ICL手術で失明する確率はどのくらいですか?

A. ICL手術で失明することはまずない、とされています。

ただしごく稀に、術後に矯正視力が低下する可能性はあります。その原因には感染症などが挙げられています(JSCRSの解説による)。
感染の頻度は高くないとされるものの、ゼロになるわけではありません。だからこそ術後の検診と、異変を感じたときの早めの受診が要になります。
Q. ICLとレーシックはどちらが安全ですか?

A. どちらが安全と一方に決めるものではなく、起こりうるトラブルの内訳が違います。

日本眼科学会『屈折矯正手術のガイドライン(第8版)』は、術後合併症を項目で示しています。有水晶体眼内レンズ手術(ICL)が9項目、エキシマレーザー手術(レーシックなど)は10項目です。後者にはドライアイが含まれます。
角膜を削るのか、入れたレンズを摘出できるのか。この性質の違いで、比べるべき材料そのものが変わります。
Q. ICLで眼内炎になる確率は?

A. JSCRSは、これまでの調査で6000眼に1例ほどの割合といわれている、としています。

この記載には母集団や調査年がありません。そのまま発生率として読むより、目安として受け取るのが妥当です。
予防としては、一般に手術の3〜4日前から1日3〜4回の抗生物質点眼を行います。術中も、器具の滅菌や術野の消毒とドレーピングを厳格に行います。これはガイドラインで求められている手順です。
Q. ICLの後遺症にはどんなものがありますか?

A. ガイドライン(第8版)は、有水晶体眼内レンズ手術の術後合併症として9項目を挙げています。

  • 術後感染性眼内炎
  • ハロー・グレア(夜間の光のにじみ・まぶしさ)
  • 角膜内皮障害
  • 術後一過性眼圧上昇およびステロイド緑内障
  • 白内障
  • 閉塞隅角緑内障
  • 網膜剝離
  • 近視性網脈絡膜萎縮
  • 虹彩切開あるいは虹彩切除による光視症
頻度は項目ごとに大きく異なります。ハロー・グレアは、EVO ICLを5年間追った研究(22名44眼)で報告した人が72.7%でした。そのうち気になると答えた人は31.8%です。
Q. ICLのレンズは何年ごとに交換しますか?一生入れたままで大丈夫ですか?

A. ICLは、定期的な交換を前提とした器具ではありません。

ホールICL(V4c)の10年臨床成績(54名103眼)が報告されています。研究期間を通じて、白内障形成・隅角閉塞・緑内障・ICL摘出の発生は認められませんでした。一方で20年を超える長期データは、まだ蓄積の途上にあります。
ICLは何年経過しても、眼内から摘出することが容易だとされます。抜去した場合は、手術前と同様にメガネやコンタクトレンズで視力を矯正できるとされています。入れたら終わりではなく、年1回程度の定期検査を続けていくものだと考えてください。
Q. ICL手術後に目をこすったり強くぶつけたりすると危険ですか?

A. 眼を強く打撲すると、ICLが固定位置から外れて脱臼することがあります。

速やかな整復手術が必要になるため、JSCRSは打撲時に念のため診察を受けることを勧めています。見え方に変化がなくても、自己判断で様子を見ないでください。
とくに術後1週間は、最も大切な時期とされます。目をこすらない、強くぶつけない。この基本の注意を守って過ごしてください。
Q. 適応検査を受けた当日に手術を受けても問題ありませんか?

A. 適応検査当日の手術は勧められない、とJSCRSは記載しています。

理由は2つあります。1つは、レンズの度数を決めるために日を変えて2回の視力検査を行うこと。もう1つは、感染予防のために手術の3〜4日前から抗生物質点眼を行うことです。
検査から手術まで日をあけるのは、精度と感染対策のための時間です。

まとめ|数字と出典で確かめれば、ICLの安全性は落ち着いて判断できる

ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性は、誰でも読める材料で確かめられます。学会のガイドラインと、国内外の追跡データです。

だからこそ、印象や口コミではなく、数字と出典をそろえて判断できるのがこの手術の特徴です。

  • 国内42施設・15011眼の研究で、ICL 1319眼に重篤な術後合併症は認められなかった
  • ホールICLの10年成績(54名103眼)は安全係数1.12で、白内障形成や緑内障の発生なし
  • ガイドライン(第8版)が術者要件・13項目の術前検査・術後6か月までの経過観察を定めている
  • 合併症の頻度はゼロではなく、数値には母集団と追跡期間という前提がある
  • 安全性は、適応・術者・施設・術後の通院という条件の上に成り立つ
  • 自分の目が受けられるかは、適応検査を受けてはじめて分かる

良好な数値は、適応のある目に、要件を満たす術者が手術を行い、経過観察まで続けた結果として出ています。

裏を返せば、この条件のどれかが欠けると、同じ数値がそのまま自分に当てはまるとは言えません。

次の一歩は、13項目の術前検査を行う施設で適応検査を受けることです。目の形状や度数によっては、手術を見送る判断になることもあります。

費用の見通しも一緒に立てておくと、迷いが減ります。ICLの保険適用の可否と実質負担の考え方は、別の記事で整理しています。

編集部
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気になった数値や不安は、そのまま適応検査の場に持ち込んでみてください。自分の目に置き換えた説明を聞けると、判断の材料がそろいます。

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